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「阿選」
焦がれていた声がする。阿選が顔をあげると、房室の入り口で待ち人が微笑んでいた。扉を慎重に閉めて、足早にこちらへと寄ってくる。
「驍宗」
思わず名を呼ぶと、ふいに抱きしめられた。冷えているなと驍宗が呟くので、長く待たせた誰かのせいだと阿選は返しておいた。
「この夜を待ち侘びた」
「それはこちらの台詞だ」
来ないなら寝てしまおうかと思っていた。拗ねたような阿選の口調に、驍宗は困ったように眉を下げた。
「悪かった」
阿選の機嫌をとるように、背後から腕をまわす。甘えるように首筋へ顔をすりよせると、阿選の苦笑が滲んだ。
「仕方がないやつだな、お前は」
困ったような声色を取り繕っているが。驍宗はちらりと最愛の伴侶を見た。阿選こそ、内心では年下の恋人を甘やかしたくて仕方がないのだと、驍宗は知っている。
「ああ、待て」
被衫の上に羽織った上衣を脱がしていると、その手を阿選が制する。どうやら脇に置いてある蝋燭が気になっているようだった。
「今、灯りを落とす」
阿選がふっと蝋燭の火を吹き消すと、辺りには暗闇が満ちる。
「さて」
驍宗の頬に白い指先がふれた。つう……とその指が唇をなぞると、暗がりに蠱惑的な笑みが見えたような錯覚をおぼえた。
「驍宗、続きを」
