Work Text:
「この度、お側に上がることと相成りました者でございます。」
「そなた、名を何と申す?新たな側室のことは、春日に聞いておられないのじゃ…」
「都から参りました 安室透でございます。申し遅れました事をお許しくださいませ。」
「そうか。美しき名だ。その名を聞くと、それだけで何とのう、瑛佑のような清き少年を思い出すのだ。」
「恐れながら、私は上様より一回り年上でございますが。」
「え、まことに?如何にも若く見えるものじゃ。」
「上様、髪に花弁が…」
男はそう言いながら、身を乗り出して居間着姿の少女に近づき、優しい手付きでその髪についた花弁を取ってあげました。
「あ…」
初対面の時、目に映るのは、男の将軍ではなく、ただ一人の美しくて可憐な少女でありました。
なんじゃ、ずいぶんお若い可愛らしいお姫様やないかと、その男は何かを嗤うように呟き、意味ありげににっと笑いました。
そのあと、その男を忌憚しているのか、または将軍のお側に侍る者たちが妬みの炎を焼いているのか、何故か大奥の中には、このような風評がたっていきました。公家のご子息とは思えぬ、浅ましさでございますなと…
果たして二人は如何になるのでございましょうか…
