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Fandoms:
Relationship:
Characters:
Language:
日本語
Stats:
Published:
2024-10-17
Words:
3,566
Chapters:
1/1
Hits:
14

空を見た日

Summary:

重力子たちが塔から脱出したらどうなるのでしょう

そう想像しながら書いたのがこれです

Notes:

日本語は私の母語ではありませんので、おかしいところがあればご指摘を歓迎します、大歓迎です

Work Text:

夜の空には、厚い雲が流れ、その隙間から時折顔を覗かせる星々がほのかに輝いていた。塔の上空にはヘリコプターの音が響き渡り、重力子たちが息を切らしながら塔の頂上へと集まっていた。その瞬間、彼らの運命は決定的に変わりつつあった。巻上博士が手にしていた研究成果が深い暗闇の中へと消え去った瞬間から、彼らはもはや単なる実験体ではなくなったのだ。

スピットファイア、いや、まだCL-610Aと呼ばれている彼は、夜風に吹かれながら無言で星空を見上げていた。冷たい空気が彼の肌に絡みつくように感じられたが、その冷たさには、どこか新鮮さが伴っていた。塔の中で味わっていた重苦しい空気とは異なり、この外の風は自由そのものを象徴しているかのようだった。

「……決めたで。」

隣で声が上がる。空、いや、SA-503Bが楽しそうに開いた。

「ワイな……あん中やったらSA-503Bゆう番号で十分や思とったけど。けど、この先外の世界じゃ必要なんやろ?ワイの名前は空や、みんなもそう呼んだって。」

「空」…新しい名前を口にする彼の声には、これまでの苦悩や束縛から解放されるような強い決意が込められていた。その響きに、CL-610Aは自然と微笑んだ。名前というものがこれほどまでに重みを持つとは、ここに来るまで想像すらしていなかった。

「空か…」

CL-610Aは外の冷たく新鮮な空気を深く吸い込みながら呟いた。彼の心には、今まで閉じ込められていた塔の狭い世界では感じられなかった高揚感が、わずかに沸き上がっていた。

「確かに、僕たちの名前は実験番号ばかりだった。キリクとシムカ、そしてガゼルを除いて、僕たちには番号しかなかった。」

CL-610Aの声は穏やかで静かだったが、その言葉には重みがあった。番号でしか呼ばれていなかった自分たちが、今こうして名前を持つ権利を得ようとしている。それは彼にとって、自分たちが新たな存在として生まれ変わろうとしている瞬間を象徴していた。

「で、お前はどうすんねん?」空が彼を見つめながら問いかける。

CL-610Aは少し考え込んだ。

「まだ決めてないな。」

彼の心にはいくつもの考えが渦巻いていた。この新しい世界で、自分にふさわしい名前とは何だろうかと。だが、それ以上に今は、この無限に広がる世界での新たな経験を見据えたいと感じていた。

「僕はまず、新しい世界を自分の目で見てから決めたいんだ。」

「まぁ、せやな。この広い空見とったら、何も決めんほうが自由でええかもな。」

空は満足げに微笑み、広がる夜空を見つめた。

CL-610Aもその夜空を見上げた。星々がまるで彼らの新たな旅路を祝福するかのように瞬いていた。しかし、彼の胸には小さな不安が残っていた。これから何が待ち受けているのかはわからない。新しい世界は、希望に満ちているのか、それともさらなる暗闇が待っているのか…。そんな思いが彼の心に影を落とす。

隣にいるSA-503Aは不安げに空の背中にしがみつき、周囲をきょろきょろと見回している。

「ワイも名前変えるんやったら、空と同じでええ…ワイは宙や。」

宙の声は震え、手は空の服をぎゅっと握りしめていた。彼にとって、外の世界は恐怖の象徴にほかならなかった。しかし、空の存在が、彼にとって唯一の安心材料であった。

「宙、君ほんとにビビりすぎろよ!」シムカがからかいながら笑い、CL-610Aも同意するように頷く。

「確かに、宙、君は少し怖がりだな。」

「うるさいわ!」

宙は顔を赤くしながら反論したが、その手はまだ空の服を握ったままだった。その幼い姿に、CL-610Aは心の中で小さな笑みを浮かべた。彼の純粋さがいつも温かさをもたらしていた。双子なのに、こんなに違うこともあるのだと不思議に思う。

その時、遠くからプロペラの音が近づいてきた。CL-610Aの思考が一瞬途切れ、場の緊張感が一気に高まった。プロペラ音が夜空に響き渡る中、雾久が声を上げる。

「みんな、急いで逃げろ!」

「ワイは必ず戻ってくるで。ここには、まだ取りに行かなあかんもんがあるんや。」

空は塔を見つめながら、決意に満ちた言葉を放った。

「ヘリの音がうるさいな。」CL-610Aは耳を押さえながら、「これだけの音だ、僕たちもさっさと散らばったほうがいいな。」

「散開しよう!」

キリクが指示を出し、重力子たちはそれぞれの方向に散って逃げていった。

 

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周囲にはヘリコプターのプロペラ音が低く響き、その音がまるで、今いる場所が危険だと静かに警告するかのようだった。CL-610Aは冷たいコンクリートの感触が背中に伝わる中で、外の世界に出た実感が少しずつ湧き上がっていた。夜風が彼の髪を揺らし、冷たい空気が肌に触れるたび、彼の思考は未来に向かっていた。しかし心の奥底には、言葉にできない不安が静かに渦巻いていた。

「外の世界って、広いなぁ…」

ふと、隣からエア・トレックの音が聞こえ、彼の思考は一気に現実に引き戻された。隣を見やると、そこには空がいた。

「空、どうしてここに?」

CL-610Aは驚いて尋ねた。

「お前こそ、ここで何してんねん。場所あけてくれや。」

空は軽く笑いながら言った。

CL-610Aは少しだけ場所を空け、二人は掩体の陰に一緒に身を隠した。

「まぁ、こんなとこでお前に会うとは思わんかったな。」

空は楽しげに言った。

CL-610Aは微笑んだが、胸の中にはまだ言葉にできない感情が渦巻いていた。彼は外の世界がどんなものなのか、本当に知りたかった。だが、それ以上に恐れていたのは、今まで共に過ごしてきた仲間たちと離れ離れになることだった。

「とりあえず、ヘリコプターが飛び去るまでじっとしとこうや。」

CL-610Aは空の言葉に頷き、静かに待つことにした。

「………」

しばらくの沈黙の後、CL-610Aはふと疑問を口にした。

「そういえば、外の普通の人間ってどうやって挨拶するんだろう?空、君は知ってるか?」

空は少し驚いた顔でCL-610Aを見つめた。彼の質問は唐突で、いつも不意を突くものだったが、その天然な一面が彼の魅力の一部でもあった。

「お前、なんで急にそんなこと聞くんや?」

空の声には軽い呆れが混じっていたが、微かな笑みも浮かんでいた。CL-610Aは相変わらずだと、その天然な部分に内心ほっとしていた。

CL-610Aは軽く肩をすくめて笑った。

「外に知り合いでもおんのか?」

「いや、もし誰かに会ったら、ちゃんと挨拶しないといけないだろうと思ってさ。」

挨拶なんて、普通の生活をしている人々には当たり前のことかもしれないが、彼にとっては未知の文化であり、些細なことが緊張を伴う。しかし外にいるなら自然に振る舞わなければ何も始まらない。だからこそ空に尋ねてみたのだ。

空は少し考え込み、ニヤリと笑みを浮かべた。

「まぁ、そんな心配いらんで。ワイが教えたるわ。」

その表情に少し首を傾げたCL-610A。

「ハーハー、僕たちは外の世界に来たこともないのに、どうして君だけそこまでわかるんのかな?」

空は少し得意げに言葉を返す。

「ちゃんと研究員に聞いたんやで、話聞いてや。」

「ほう、どうやるんだ?」

CL-610Aは外の世界での挨拶がどんなものなのか知りたくてたまらなかった。自分が「外の世界」に溶け込めるかもしれないと期待していたからだ。

「簡単や、口にキスするだけでええんや。これが外の挨拶やで。」

空は冗談めいた口調で言った。

「キス?」

CL-610Aは目を大きく見開き、驚きを隠せなかった。「キス」という行為が、あまりにも親密すぎるものだと思っていたが、外の世界ではそれが挨拶だと言われれば信じざるを得ない。

「じゃあ、こうすればいいんだな?」

彼は空に近づき、唇を触れ合わせた。CL-610Aにとってはただの「挨拶」だったが、瞬間的に心臓が一瞬止まりそうな感覚を覚えた。

「こうか?」

空は一瞬呆然とし、次に微笑んだ。

「惜しいな。ワイ、言うの忘れとったわ。舌も使わなあかんねんで。」

空はいたずらっぽく笑い、再びCL-610Aに近づいた。その挑発的な表情に、CL-610Aの胸には不安と好奇心が入り混じった戸惑いが生じたが、彼はそのまま空の言葉に従ってしまった。

(これが、本当に挨拶なのか…?)

疑問が頭をよぎりながらも、彼は自然とその瞬間に身を委ねた。唇が触れ合い、舌が絡み合ったその瞬間、CL-610Aの心には説明のつかない奇妙な感覚が広がっていく。心拍が速まり、胸の奥で湧き上がる感情に戸惑いながらも、新たな発見のような喜びさえ感じていた。

「もしこれが外の人々の普通の挨拶なら、なんて親密な世界なんだろう…」

数秒間続いたその行為が終わり、CL-610Aは一息整えた。混乱とともに心の中で湧き上がる新たな感覚に面食らいながらも、彼はぼそりと呟いた。

「普通の人間の挨拶って、なんだか面倒くさいもんだな。」

彼の口調にはどこか感慨深いものが混ざり、微かな皮肉が漂っていた。その言葉を発するCL-610Aの頬にはほんのりと赤みが差しており、自分でも説明がつかないこの新しい感覚に驚きが隠せないでいた。

「せやろ?普通の人間は、なんやかんやとルールが多いや。」

空は笑いながら言った。その飄々とした笑顔が、先ほどの行為で感じた二人の間の緊張感をさらに和らげ、CL-610Aも少しだけ安心したように見えた。その瞬間、外の世界の複雑さが少しだけ理解できた気がした。

(ルールは多い…それでも、自由がある…)

 

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遠くでプロペラの音が次第に小さくなっていくのが聞こえ、静かな夜の空気が二人を包み込んだ。CL-610Aはその音に耳を澄ませ、ゆっくりと立ち上がった。さきほどの「挨拶」の余韻が胸の中でかすかに響いていたが、同時に、これから何が待っているのかという新たな期待が心を占め始めていた。

「ヘリの音、もう聞こえなくなったな。そろそろ僕たちも散ったほうがいいな。」

CL-610Aの声には平静が戻っていたが、その胸の内では、新しい感情と自由への希望が交錯していた。

「三日後、約束の場所で集合や。」

空も立ち上がりながら言った。彼の声には確信があり、未来への強い意思が感じられた。

「それと、次に会う時にはちゃんと新しい名前教えてくれよ♡」

「分かったよ。」

CL-610Aは軽く笑みを浮かべながら手を振った。