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Rating:
Archive Warning:
Category:
Fandom:
Relationship:
Characters:
Language:
日本語
Stats:
Published:
2024-11-30
Completed:
2026-03-21
Words:
19,628
Chapters:
11/11
Kudos:
15
Hits:
490

A Day in the Lives

Summary:

Xの月影ワンライ企画で書いた掌編。全て同じ世界軸。
1. 2019年半ば、東京
2. 2020年4月、仙台
3. 2022年9月26日、ローマ
4. 2022年10月、ローマ
5. 2023年3月、ローマ
6. 2023年10月、ローマ
7. 2024年7月、ワルシャワ
8. 2024年9月、トリノ
9. 2024年12月22日、トリノ
10~ 時期不定

Short stories written for one hour writing events in X (Twitter). All stories are set in the same universe.
1. Mid of 2019, Tokyo, Tsukishima
2. April 2020, Sendai, Tsukisima
3. Sept 26th, 2022, Rome, Tsukishima
4. Oct 2022, Rome, Kageyama
5. March 2023, Rome, Kageyama
6. Oct 2023, Rome, Kageyama
7. July 2024, Warsaw, Atsumu
8. Sept 2024, Turin, Kageyama
9. Dec 22nd, 2024, Turin, Kageyama
10- Undetermined

Chapter 1: 信号

Chapter Text

 東京に行く用事ができたからといって、東京にいる元チームメイトと会う約束を取り付ける必要はない。烏野同期のグループチャットに山口がそんな話題を投げ込んだとき、影山は無反応だったし、僕も何も言わなかった。
 でも僕はローマには行きたかった。史学専攻卒として、単純に興味があったのだ。ただ資金は乏しかった。新卒で非正規。少しでも安くなる可能性があるなら賭けたい。
 そういうわけで、個別に連絡を入れた。時間はある、と愛想のない返事が来た。
〈行きたいとこある?〉
〈ガレリア2〉
〈どこそれ〉と聞きながらマップで検索をかけていたから、教えられるより早く、新宿にある大型スポーツショップだということが分かった。
 一人で行けよ。
 と言ってやりたかったけれど、国内最大規模のバレーボール用品売り場という謳い文句を見ていたら、一度覗いてみるかという気分になってきた。了承して、昼過ぎに現地で落ち合うことにした。新宿駅東口で待ち合わせるよりは安全だと思ったのだ。
 当日、時間の少し前に現地に着いた。バレーボール用品のフロアに上がってすぐ、黒のジャージ姿の影山を発見した。チームジャパンのロゴこそないが、俺が日本代表だといわんばかりの佇まい。あたりを見回しながら声をかけた。
「王様」
「――その呼び方」
「影山、って呼んでほしいの?」
 こんなところで。
 日本代表のユニフォームが飾られている方に視線を投げたら、彼は面倒くさそうに首を振ってミズノのシューズに目を戻した。渡航前にいくつかまとめ買いしたいのだと言う。僕は自然な流れで、
「ローマでの家は決まった?」
 あまり郊外ではない方がありがたいと思いつつ尋ねた。
「まだ。向こう行ってから紹介してもらう」
「どの辺に住むとかも分かんないんだ」
「どこに住んでも変わんねえだろ」
「……まあ、バレーしに行くだけだもんね」
 世界中から観光客が押し寄せる場所に行っても、君はバレーしかしないんだもんね。呆れ半分感心半分で言うと、
「今の、嫌味か?」
 滅相もない、と首を振る。バレーのためだけにイタリアまで行ける、世界でも有数の選ばれし者に対して、まさかそんな失礼な。
「家決まったら教えてよ」
 笑顔を浮かべて仕切り直せば、やっぱり何か企んでんだろ、と余計に怪しまれた。なくはないけど、どうしていつも悪い方に取るのさ。
 シューズを見つくろった影山がサポーターも欲しいと言うので、僕も一緒に物色した。だいたいネットで買うから、現物を見比べるのは新鮮だった。お次はウェアだ。こいつはどうやら全ての棚をチェックするつもりらしい。大物は寮に送り、すぐ使うものだけ持ち帰ると言う。こっちもつられてテーピングやら靴下やら、荷物になるのに買ってしまった。
 およそ二時間後、僕らは揃いの紙袋を下げて店を出た。僕は小腹が空いてきていたが、影山が迷わず駅の方向に歩き出したので、まあそうだよな、と思いながらついていった。
 あと一つ信号を渡れば駅、というところでスニーカーの紐がほどけていることに気づいた。そして僕がしゃがんだ瞬間、信号が青に変わったらしい。どっと人が動き出し、影山の脚も遠ざかった。
 急いで結び直してから立ち上がったが、彼の背中は見当たらない。あの身長なら人混みの中でも目立つのに。
 頑張れくらい言っておけばよかったかな。
 僕なんかに言われなくても、あいつは一人で頑張るんだろうけど。
 思いながら、人の流れに乗って建物の中に入った。改札が近づいてきたあたりで不意に腕を掴まれた。黒いジャージの上下。同じ柄の紙袋。
「……いたの」
 驚いてそれしか言えなかった僕に、たりめーだろ、と影山は言った。しかしそれが当たり前だと、僕にはどうしても思えなかった。
「帰っちゃってよかったのに」
「――人がせっかく」
 嘘だよ。
 被せるようにそう言って、今度は僕が影山の腕を掴み、もと来た道を引き返した。後ろから聞こえてくる文句は全部無視して、再び東口の外に出る。屋内にいたのは一瞬なのに、街を覆う光がやけに眩しく感じられた。
 信号は赤。前の人に続いて立ち止まり、手を離して尋ねた。
「ご飯でも食べない?」
 思いがけない提案だったのか、影山は目つきを険しくしたが、やがて小声で、
「お前の奢りな」
「今回はね」
 二人横並びで横断歩道を渡って、飲食店の多い通りに向かった。これで貸しひとつだ。