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Rating:
Archive Warning:
Category:
Fandom:
Relationships:
Language:
日本語
Stats:
Published:
2024-12-15
Words:
1,698
Chapters:
1/1
Kudos:
7
Hits:
256

Oranges, lemons and rose petals

Summary:

"Make a sandwich with jam, put some warm tea in a pot, and take them on a picnic to the flower garden."
"... by bicycle."
"Yes. Maybe I'll be able to ride a bike better than now."
Lu Feng and Anzhe on Valentine date.
ラジドラのバレンタインデート福利がかわいい話で好きなので…!

Work Text:

「眠たい?」
「ううん、まだ平……気……」
返事をしながら安折が大きなあくびをしたので、陸渢はそれを見て小さく笑った。
「眠いなら寝ていい」
「でも、陸渢はお腹すいてない?」
ポリー先生からバレンタインの話を聞いた安折は陸渢を自転車に乗せてばらの花畑に連れて行ってあげたかったのだが、結局は陸渢が自転車を漕いでいる時間の方が長かった気がする。人類の中でもとくに長年審判者を勤め上げてきた陸渢と体力を競おうとするのが間違いかもしれないが、せめて帰ったら陸渢にスープでも作ってあげようと思っていたのだった。
陸渢は疲れていないと言うが、それでも一人でさっさと寝てしまうのはキノコといえど人情がないような気がした。
「食事はいつでも大丈夫」
そう言いながら、陸渢の腕が背後から安折の腰に回される。安折は少しだけ振り向いて髪に落とされるキスを受け、手にしたばらの花を見せて言った。
「せめて、これだけ飾ってから」
「うん」
情人節――バレンタイン――が恋人に花を贈る日だと聞いて、陸渢が手折ってくれたばらの花。安折はそれがとても嬉しくて、できるだけ長くこの花をきれいに生けたいと思ったのだった。花瓶のような気の利いたものはなかったけれど、安折は食器の中から一番きれいだと思ったグラスを取り出して水を入れ、ばらの花を挿した。
(……恋人)
安折は陸渢を愛しているし、陸渢が安折を愛してくれていることも知っているし、これからずっと二人で生きていくのだと思っている。だが、ふと陸渢が安折のことを恋人だと思ってくれているという事実に、不思議と胸が温かくなるのだった。
ばらの微かな香りに鼻を近づけた安折の耳元で、陸渢が言った。
「食べるの?」
「……食べない」
確かに安折は色々なものを口に入れているが、今日恋人からもらった贈り物のばらと食べたりはしない。……たぶん。陸渢はやっぱり意地悪だ、と言おうとすると、ふわりと抱き上げられた。
「眠いなら寝る」
「自分で歩ける」
「恋人の日だから」
「……」
反論を屁理屈で封じられてしまった安折は、おとなしく陸渢の胸に顔を寄せてベッドまで運ばれ、やはり慣れない自転車を頑張った疲れもあったのだろう、ベッドに到着するころには寝息を立てていたのだった。

 

安折が目を覚ますと、おそらくもう夜の時間帯だった。
「おはよう」
「おはよう、陸渢。……朝じゃないけど」
「うん」
安折の隣に並んで横になっていた陸渢が、そっと頬を撫でた。陸渢に眠っていた様子はなく、隣で眠っていた安折の顔をずっと眺めていたのだろうか。そう思った安折がよだれがついていないか口元を擦ると、その様子を見て陸渢が笑った。
「……そういえば、ばらを食べたいなら」
「食べないって言ったのに」
思いついたように話を続けようとする陸渢に、安折が頬を膨らませる。安折の頬を親指で撫で、陸渢がこんなことを言った。
「ばらでジャムを作る方法がある」
「ジャム?」
「そう」
興味津々といった表情で安折が陸渢の方を見上げると、緑色の瞳がなぜか少しだけ遠くの方を見ていた。
「朝早くに花びらを摘んで、砂糖と煮詰めると聞いた」
へえ、と相槌を打とうとした安折は、いったい誰が陸渢とそんな話をしたのだろうと興味が湧いた。
「誰に聞いたの?」
「……母親に、昔」
陸渢の返事を聞いた瞬間、心臓に深い針を一筋差し込まれたように安折の胸が痛んだ。守ることのできなかった約束、陸夫人は彼のことを恨んでいたという言葉。安折がどれだけ陸渢のことを想っていても、彼と母親の間にあるものをひっくり返す力を持っておらず、ただ強く陸渢のことを抱きしめるしかできなかった。
安折がしがみつくように陸渢の背中に腕を回すと、同じように陸渢も抱き返してくれた。
「作り方、教えて。そのうち僕が作ってあげる」
「あまり詳しく覚えていない」
「大丈夫。二人で味見しながら作れば、きっとおいしいのができるよ」
「うん」
「パンに乗せる?お茶に入れる?ジャムでサンドイッチを作って、あたたかいお茶をポットに入れて、それを持って二人でお花畑にピクニックに行こう」
「……自転車に乗って」
「うん。たぶん、その頃には僕ももっと自転車にうまく乗れるようになってるから」
陸渢を背中に乗せて、自転車で颯爽と道を駆け抜けよう。心地のいい風で、少しでも陸渢の心の中であたたかいものと嬉しいことが増えますように。
「安折、」
唇と耳元にひとつずつキスをして、陸渢が言った。
「ありがとう」
「何に?」
「今日のことと他のことと、全部に」
陸渢の低くて柔らかい声が耳に心地よく、安折はあたたかい胸元に顔を埋めて再び目を閉じた。
二人の暮らしは、明日も明後日も、まだまだ続いていく。