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Rating:
Archive Warning:
Category:
Fandom:
Relationships:
Language:
日本語
Stats:
Published:
2025-04-10
Words:
3,893
Chapters:
1/1
Kudos:
3
Hits:
140

my precious one and precious things

Summary:

[If I could, I'd brag about my boyfriend a lot.]
[When we have a wedding, I'm sure it will make the news. That's sooner or later.]

この二人はどういう形で公表するのかな?もう公表してるも同然だが……という話です。祁母も好きなのでこういう話になりました。

Work Text:

訓練の合間に皆で食事をしていた時のことだった。
ネットニュースを冷かしていた卜那那が、とあるチームの選手が恋人との交際を公式アカウントで発表したという話題を見かけて騒いでいた。とくに交友関係があるというわけではなく、単なるゴシップの野次馬である。
「わざわざ発表するほどのことか?」
「わりとリア恋ファンが多い選手らしい。詮索とか憶測をやめてほしいってことだろ」
卜那那と老凱が取りとめもない話をしていると、興味なさそうに于煬の隣でコーヒーを飲んでいた祁醉がふと何か思いついたような顔をした。
「……その顔はまたくだらないことを言おうとしているな……?」
目ざとく見つけた卜那那が釘を刺すが、祁醉を黙らせるのは至難の業というものだ。
「そういえば俺たちも正式に発表はしてないんじゃないか?」
いかにも大発見という声色でそんなことを言う祁醉に、賀小旭は呆れた顔をする。
「発表って、Youthとのことか?」
「他に何が?」
「お揃いの腕時計、お揃いのタトゥー、『俺のYouth』発言に、今は指輪まで着けて配信してるんだろう?今さら何を発表することがあるんだ」
祁醉の隣にいる于煬は居たたまれず、聞こえないふりをして黙々と箸を運ぶことしかできない。
実際、祁醉と于煬の関係はほぼ暗黙の了解と呼んでも差し支えない状態で、配信中にあからさまなコメントが来てもスルーはするが敢えて否定したこともない。二人きりの時に着けてくれれば……と期待して于煬が送った指輪も、祁醉はあらゆる場所で見せびらかしている。
「小哥哥、公表するならどんな方法がいい?」
結局彼氏は聞こえないふりをさせてくれず、于煬は小さな声で答えた。
「……自分は、隊長に迷惑をかけるのはイヤだ」
以前、于煬のタトゥーがファンたちの間で騒ぎになった時も、憶測が憶測を呼び、根も葉もない祁醉の悪い噂が出回りそうになったのだ。それでなくともeスポーツ選手たちは過剰なまでに素行に注意しなくてはならない風潮があり、恋愛にうつつを抜かして試合に負けたのだと悪口を書き込まれても反論することは難しかったりする。
無論、于煬はこの先も試合に負けるつもりはないが、しかし自分とのことで祁醉が悪く言われるのは本意ではなかった。
「こんなに強くてかっこいい于隊長がどうやって俺に迷惑をかけるの?」
祁醉の口ぶりでは、きっと于煬が何を心配しているかなどお見通しなのだろう。
心の中で暖かさを感じながら、于煬は今度は賀小旭の方をちらりと見て言った。
「あと、ファンのことは大事にしたいけど、プロ選手だからってプライベートの全部を公開する義務はないと思う」
「よく言ったYouth!」
すかさず賀小旭の賛同が飛んでくる。ゴシップを真に受けたファンが公式に対してあれこれ情報を求めてくるのに思うところは多いのだろう。
そのあと于煬は携帯電話を手に取ってこっそりと操作し、隣にいる祁醉の肩を突いた。祁醉が自分の携帯電話を見ると、于煬からのメッセージが一通届いている。
【本当は自分もたくさん彼氏のこと自慢したい】
もうメッセージを読んだであろう祁醉と目を合わせることができず、于煬は再び目を伏せて食事を再開した。二人きりのとき、祁醉はファンたちの男神でもなくHOGのオーナーでもなく、ただただ于煬の彼氏なのだ。十分過ぎるその幸福を于煬は噛み締めているけれど、こんなに素敵な彼氏がどれだけ自分に良くしてくれるのかを聞いてほしいと思うのは過分だろうか?
そんなことを考えていると、于煬の携帯電話にも新着メッセージの通知が届いているのに気付いた。
【結婚式をしたらきっとニュースになるから遅かれ早かれだよ】
「……!」
そう、于煬は一生黙っている必要はないのだ。大好きな祁醉のパートナーとして暮らす将来にぼんやりと思いを馳せているうちに頼華の声で休憩終了となり、于煬は慌ててHOG一軍の隊長として頭を切り替えたのだった。

 

遅かれ早かれ、と祁醉は言ったが、予想できないところから情報は出回るのであった。
【ショック!Youthが女の人とデートしてたみたい![写真添付]】
【顔ははっきり見えないけど年上っぽい?マダムファンが貢いでデートしてもらったんだったりして】
【それも嫌だな……お金積めばデートしてくれる人なんだ……】
【彼女だったらどうしよう!絶対Drunkと付き合ってると思ってたのに】
【cpファンは自重して】
【@HOG公式 どういうことか説明してください [リンク]】
その日、HOGファンたちの間で話題になっていたのは一枚の写真だった。高級ホテルのラウンジで、于煬と思しき人物が女性とお茶を飲んでいる写真だ。
当然HOGの面々にもすぐに知られるところとなり、于煬は困った顔で賀小旭の方を見た。
「俺、ネットで書かれてるようなことは何もないです。ただ……」
次に祁醉の方を見て言った。
「隊長のお母さんにお茶に連れて行ってもらった時に撮られたんだと思う。……隊長、お母さんに迷惑をかけてごめんなさい」
「于煬は何も悪くない。盗撮するやつが悪い」
当人よりも腹を立てているらしき祁醉は、謝る必要はないときっぱり言った。
「ていうかここ五つ星ホテルのラウンジだろ?そんなところでも盗撮する奴がいるんだな」
呆れたように卜那那もそんなことを言う。
于煬は悩んだ。自分一人の問題であれば疚しいことがなければ黙殺してもいいし、公式アカウントから盗撮について警告を出してもらうのでも十分だろう。しかし、自分にいつも良くしてくれる祁醉の母親に飛び火することだけは避けたかった。
「マネージャー、このまま何もしなくて大丈夫ですか?自分はどう言われてもいいけど、隊長のお母さんに何かあるのは困るんです」
選手に関する流言絡みについては見聞きした経験も多い賀小旭がどんなリスクがあるかを考えていると、祁醉が携帯電話を取り出した。
「于煬のことなら俺が一番怒ってると思ってたけど、どうやら俺より上がいたようだ」
そう言って自分宛てに届いたメッセージを皆に見せる。
「マネージャー、これを俺のアカウントから投稿してもいいかな」
「好きにしろ。どうせお前はこれ以上燃えても何も変わらん」
「小隊長に対する態度と違い過ぎないか?」
「まあとにかく公式からは盗撮にはチームの法務が厳しく対応するとだけ言っておく」
自分の肩越しに交わされる会話を聞きながら、于煬は祁醉に尋ねた。
「本当にいいの?」
「もちろん。そうしないと今度は俺が怒られる」
冗談めかして言っているが、祁醉はいつだって于煬を守ろうとしてくれるのだということをよく知っている。
「隊長、ありがとう。お母さんにもお礼を言わなきゃ」

こうしてHOG公式及び選手のアカウントから三つの投稿が上がった。
一つは公式からの盗撮に対する警告。
二つ目はDrunkが投稿した写真とメッセージだった。
【母親から、「もう一人の『うちの子』にお茶に付き合ってもらって楽しかった」って写真が送られてきた [写真添付]】
その写真は祁醉の母親と于煬が例のラウンジで並んでいるツーショット写真だった。元々祁醉の両親は祁醉がプロ選手になることを認めていなかったため、家族としてあまり表に出てくることはなかったが、顔を見れば祁醉の面影がわかるだろう。
また、実業家としても有名であるため、顔を知っているファンも少なくはない。
この騒動を知った祁醉の母親が祁醉以上に怒り、この写真を見せてやりなさいと言って祁醉に送ってきたのだそうだ。文章はもっと過激だったので、少し表現をマイルドにしたと祁醉は苦笑していた。
「ところで小哥哥、なんでこんな写真を?」
「……隊長に自慢したいからって」
赤くなりながら答える于煬を見て、祁醉は呆れればいいのか喜べばいいのかわからないという顔をした。
とにかくこの投稿で一気にネットの論調は盗撮写真をアップした者に対する批判に傾き、根も葉もない濡れ衣は晴れたというわけだ。
そして三つ目は、Youthからの配信予告だった。
今日はゲーム配信だけではなく、少し話をしたい、と。当然集まったファンの数は半端ではなく、この日の視聴者数一位は当然Youthのチャンネルだった。
「今日は……うん、改めて話しておきたいことがあって」
【あの盗撮写真のこと?Youthは気にしなくていいのに】
【煬神に迷惑かけるなんて許せない!】
具体的に于煬は何の話をするとは言っていなかったが、やはり例の話題だろうとファンの方が先に憤っていた。
「俺よりも、Drunk……隊長のお母さんに迷惑をかけたくないってことを言いたかった」
祁醉の投稿で噂話はデマだとわかるだろう。しかし、今度はなぜ祁醉の母親と一緒に?という好奇心を刺激してしまうことを于煬は心配していた。そこで、このことは自分の口から話させてほしいと祁醉と賀小旭に頼んだのだった。
「本当に隊長のお母さんもお父さんもすごく良くしてくれて……いつ会ったかって?フロリダから帰ってきたあと実家に……」
デマに憤っていたファンたちのコメントの流れが爆速で変わっていく。
カメラはオフにしていてよかったと思いながら、于煬は耳を赤らめて少しだけファンたちの質問に答えていった。
「そう、チームは休暇だったから隊長が誘ってくれて。何して過ごしたって、お母さんたちとご飯を食べたり、アルバムを見せてもらったり」
結局あの時は二晩とも祁醉と一緒に過ごしたことはさすがに言えないが、于煬は正直に答えた。
「つまり言いたいのは、俺にとって隊長と隊長の家族は大事な人だから、悪く言われたり詮索したりは止めてほしいってこと。ただ、それだけが言いたかった」
大量のコメントが流れていく中で、一つのコメントが于煬の目に止まる。
【Drunk:どう大事なのか具体的に教えてほしいな】
急いで祁醉の机の方を見ると、悪戯っぽく微笑まれた。
「隊長……!」
突然降臨したDrunk本人と、Youthは思わず零した声の甘やかさに、ファンたちも笑いながら冷やかしている。
一つ咳払いをして、于煬は答えた。
「隊長は俺の人生の中で一番良くしてくれた人で、ずっと側にいたいと思ってる人」
そう言うと、一瞬カメラがオンになり、于煬は首にかかったチェーンから指輪を取り出すと小さくキスをして見せた。そして、またすぐカメラはオフになる。
阿鼻叫喚のコメント群に于煬はこれ以上反応することなく、そろそろゲーム配信に戻ると言ってログイン画面が映し出される。
煬神には敵わない、と書かれた祁醉のコメントに気付いたかどうかはわからなかったが、その後の顔出し配信では左手の薬指に指輪をつけた于煬の姿が見られるようになったのだった。