Work Text:
船の振動は、
眠りを揺らさない程度の低い音で続いている。
ふっと目が覚めた。
喉が少し乾いている。
……喉乾いたな。水。
体を起こそうとしたとき、
足首にやわらかい温度を感じた。
ベッドの中でそっと触れると、
ターレスの尻尾がゆるく巻きついていた。
ターレスは背を向けて眠っている。
その背中は大きく、寝息は深く、
夜の静けさにそのまま溶けていた。
尻尾が足首に触れたままで、
ターレスの気配だけがそこに残っていた。
私は静かに尻尾をほどき、
ベッドを抜け出した。
廊下に出ると、
機械の低い音が少しだけはっきり聞こえた。
冷えた水をひと口飲んで、
そのまま静かに部屋へ戻る。
ドアを閉めた瞬間、
音がふっと小さくなる。
部屋の空気がまた深い静けさに戻る。
ターレスに背を向けて、
ベッドにそっと潜り込む。
体勢を整えた瞬間、
足に何かが触れた。
ゆっくり、
ためらいなく、
私の脚をなぞるように上がってくる。
ターレスの尻尾だった。
その感触に、小さく息を呑んだ。
予想していなかった動きに、
意識がそちらへ引き寄せられる。
太もものあたりで、
尻尾はゆるく巻きついた。
まるで、
私が戻ってくるのを
静かに待っていたかのように。
ターレスは眠ったまま。
寝息は深く、変わらない。
尻尾だけが、
私の帰りを確かめるように動いていた。
驚きは一瞬だけで、
ターレスが無意識でしていることだとすぐにわかる。
深く考えず、
そのまま目を閉じた。
太ももに巻きついた尻尾の温度と、
小さくなった機械音と、
ターレスの寝息。
その三つだけが、
静かに夜を満たしていた。
私はゆっくりと、
眠りに戻っていった。
