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Rating:
Archive Warning:
Category:
Fandom:
Relationship:
Characters:
Language:
日本語
Stats:
Published:
2026-07-19
Words:
1,602
Chapters:
1/1
Kudos:
5
Hits:
129

半身

Summary:

真・運命ネタSS

Short story about Maji Destiny.

Work Text:

「プラトンがなあ」と舜太が言った。「人ってもともと二人でひとつやったのが、ぱかんて割れてバラバラになってしもたんやって言ってて」
 うん? と俺は相槌を打った。困惑が表情に現れていたのだろう、舜太は少し考えるような間を置いた。
「ソウルメイトとか言うやん?」
 ああ、と俺は頷いた。知っている単語だった。
「それってバラバラになる前の片割れを指してんねん。俺らはその片割れを、合わさったらぴったしひとつになるような相手を、生涯ずっと探しとるらしい」
 そうなんだ、と俺は言った。さっきミュージックビデオの撮影が終わったばかりの二人のユニット曲――真・運命――の歌詞から連想した話のようだった。舜太曰く、プラトンとは古代ギリシアの哲学者であるらしい。元素記号みたいな名前だなと思ったけれど、口には出さなかった。代わりに俺はちょっと笑って、
「ロマンチックなこと言うね」
 舜太は大きな目をほとんど線になるまで細め、重たい鉄の扉を押した。くしゃりという擬音が聞こえてきそうな笑顔。
「歌詞が歌詞やからな」
 ファンはよく俺らのことを双子と呼ぶが、正直ちっとも似ていないと思う。
 おもてに出ると太陽はだいぶ傾いていた。俺らは手をかざしてあたりを見回し、写真撮影に適した場所を探した。公式用のは飽きるほど撮ったから、今度は個人のアカウントに投稿する用だった。あちこちでカメラを構えてみて、最終的には俺が立ち位置を決めた。正確には座り位置だ。
「この衣装でうんこ座り?」
 舜太はいったん渋ったものの、背景の映り込み具合は気に入ったらしい。角度を微妙に変えつつ、俺のスマホでかなりの枚数を撮影した。丸めた腰が痛くなるまで。そしてついでにスタッフさんに、後ろ姿も撮ってもらった。
「やっぱこの衣装でしゃがんだらあかんわ」
 立ち上がった俺のマントの裾を、舜太はぱたぱた叩いて言った。自分の衣装は楽屋の床に脱ぎ捨てたまま放置して、誰に蹴飛ばされても構わずにいるくせに。
「ありがと」
 口にしながら俺はふと、さっきの話を思い出し、舜太のソウルメイトはいつ見つかるのかなと思った。アイドルという職業柄、自ら探しに行くべきではないし、仮にうっかり出逢ったとして、仲間うちでも共有されないだろうが。秘密を知る者が増えるほど、リスクは大きくなるから。
 十年という月日を誰より近くで過ごした人の幸せを、祝福することはおろか、認識することすらきっとできない。それが俺らの選んだ運命で、宿命でもあるのだけれど。
「いつか祝わせてね」
 色々端折った末に出てきた俺の発言に、舜太は一瞬ぽかんとしたが、
「あれは柔のことやで」
 と正しく理解をして言った。
「俺の片割れなんて、柔以外に誰がおんねん」
 次は俺がぽかんと口を開ける番だった。西日に赤く照らされた相手の顔をしばらく見つめたのち、でも、と俺は小声で言った。
「俺と舜、ぶっちゃけ大して似てないじゃん」
「似てへんから片割れなんやろ」と彼は目を見開いて笑った。「むかし柔が言うてたやんか、舜太は俺にはないものを持ってるって。それって結局逆も同じで、俺が持ってないものは柔が持ってくれとるやろ。凹凸の、へこんでる部分と出っぱってる部分がこうぴたっと重なるみたいに」
 黒い手袋を嵌めた両手の指を祈るように組み合わせて続ける。
「もうひとつには戻られへんけど、マジでマジで出逢えて感謝しとるよ」
 ――僕が持ってない物を持っている。
 数年前の柔太朗王の収録で、俺は確かに舜太の好きなところをそう答えた。しかしその後開催された曽野王での舜太の回答は、俺の笑ったときのえくぼがどうとかいう外見的な話だった。自分が何と予想したかまでは覚えていない。でもがっかりはしたはずだ。この期に及んで顔なのかって。
「柔は?」
 待てを命じられた犬みたいな目。笑い含みで見返して、なるほどね、と俺は言った。
「今回はそういう設定でいくってことか」
「設定言うな!」
 声から逃げるようにしてスタジオの中に戻る。このあと予定されている雑誌の取材で、舜太が何を喋るつもりなのかは聞くまでもないと思われた。いつも通り、俺のゆうに二倍は喋って紙面の大半を埋めてしまうのだろう。含みも匂わせも何もない、ストレートで情熱的な言葉でもって。
 そっちがその気なら、まあ、相乗りするのもやぶさかじゃないけどね。