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Fandom:
Relationship:
Characters:
Additional Tags:
Language:
日本語
Stats:
Published:
2026-07-27
Words:
834
Chapters:
1/1
Hits:
10

KITE

Summary:

シッティングバレーボール選手のモルテザ・メヘルザードは同郷のチームメイト、ラメザン・サレヒに誘われてイランの高い山へドライブに行く事となる。そこでラメザンが凧を上げている時、モルテザは不思議な声を聞く。

Notes:

はじめまして、私は日本人です。英語が苦手なので作品も基本的に日本語で書く事をご容赦ください。

(See the end of the work for more notes.)

Work Text:

「あの山がよく見えるトコに行こう」
突然、ラメザンにそう言われて向かった場所は、この国でとても高い山がよく見える丘だった。
足の悪い僕に気を遣ってか、彼はゆっくりと歩調を合わせてくれている。
「天気が良くてラッキーだったな」
先に目的地に着いた彼が振り返り、僕に笑いかける。すっぽり雪に覆われた山によく映える、澄んだ青空。
さて、とラメザンは両手に抱えていた包みの紐を解き、バッと広げた。それはこの国の国旗に似た、緑・白・赤の3色を彩った三角形のカイトだった。
「僕、持ってあげるよ」
この大きさでは一人で飛ばすのは難しいだろう。支えるくらいなら僕でも出来る。
風がやや強く吹いた。
「よし、飛ばすぞ」
糸を引っ張る彼の声に合わせ、僕はカイトを手放した。
風の力で大きなカイトはふわりと浮き、ぐんぐん空高く舞い上がった。
「凄い…」
三色のカイトは鳥のように大きく翼を広げ、空を自由に飛んでいるかのように見えた。
(僕もあのカイトのように自由に空を飛べたらなぁ…)
ここ数ヶ月の間、この国の状況は最悪の方向に向かっている。女性をはじめ、罪のない若者達が降り注ぐ鉛の雨に撃たれて命を落とし、大地は彼らの流した血で真っ赤に染まってしまった。
僕らはただ、平穏な生活を望んでいるだけなのに。
その時、どこからか〝声〟が聞こえた。

《大丈夫だよ》

「えっ?」
慌ててラメザンの方を見るが、彼は黙々とカイトを揚げているだけだ。
上を見上げると、〝声〟はまた聞こえてきた。

《君たちの願い…そう、『自由』を手にする日は必ず来る。信じる力をつけておけば、きっと》

それだけ言うと、〝声〟は聞こえなくなった。
と、同時に風が止んだのか、カイトがふにゃふにゃと下がっていくのが見えた。
「あー、もうこれ以上は無理かな」
ラメザンは諦めたかのように呟くと、糸を巻いてカイトをこちらに引き寄せた。
「…さて、帰ろうか」

「ねぇ、どうしてあんな所でカイトを揚げようなんて思ったの?」
帰りに寄ったカフェで僕はラメザンに訊いた。
「ん?なんて言うかな…一種の願掛け?」
それから彼は他の人に聞かれないよう、僕の耳元でそっと話した。
「僕と同じ願いだ…それと、あの〝声〟」
「声?」
「ううん、何でもない」
とりあえず、あの〝声〟は僕だけの秘密にしておこう。
いつか『自由』を手にする日が来るその時まで。

Notes:

この作品はイランのお国事情に憤りを抱いていた頃に書いた物です。まだまだ願い通りには程遠いですが、彼の国が平和になる事を祈るばかりです。